セガサターンの後期には後に名作と呼ばれるソフトが多数発売されました。
その中の一本で、ドリームキャスト発表後のセガサターン末期とも言える時期に発売されたアドベンチャーゲームです。
名作ゆえにプレイステーションにも移植されました。
プレイヤーは高校卒業したばかりの探偵のたまご「黒須 剣」となり、数々の事件に挑戦します。
プレイのきっかけ
当時の私はコマンド選択式のアドベンチャーゲームはほとんどプレイしていません。
アドベンチャーゲームは雑誌の誌面も地味なのであまり注目もしませんでした。
また、当初「I-VACS」というシステムを標榜していました。
これはディスク1枚目でのプレイ結果を開発会社に送ると、そのプレイ内容に適した2枚目のディスクが送られてくるというものでした。
こういう奇をてらったキャンペーン(?)って出来の良くないゲームでよくやっているイメージを持っていましたので、ますます自分の中での注目度が薄れていきました。
しかしながらセガサターンの名作といえば必ずと言っていいほど名前の挙がるゲームです。
歳のせいか、アドベンチャーもプレイしやすくて好きなゲームのジャンルになってきたので、今回プレイしました。
クリアまでのプレイ時間は、最終話のマルチシナリオ部分をすべて見た分を含めて22時間程度でした。
主な登場人物
黒須 剣
高校を卒業後、探偵になることを決意した青年。
西山 友子
冴木探偵事務所の事務員。
気が強い。
高梨 まゆな
名門校エリス女学館の学生。
第三話以降に登場。
広川千絵里
まゆなの友人でエリス女学館の2年生。
第三話以降に登場。
ストレスを排除してゲームに集中できる
このゲームのオススメのポイントを紹介します。
クロス探偵物語はシナリオ自体の良さもさることながら、それを阻害する要素がきちんと排除されていてゲームに集中できます。
ゲームをプレイしている最中、CDアクセスによる読み込みをまったく感じませんでした。
とくに第四話はフルボイスで約50分あるのに読み込み時間が一切なかったことには驚きました。
カーソルの移動や選択肢などインターフェイスもシンプルで小気味よく動きます。
会話ログの巻き戻し機能もすぐに読み返せてストレスがありません。
コンテンツの本筋とは関係ない部分でプレイヤー側にストレスがかかったらそれも評価の一部になってしまいます。
ユーザーにストレスを与えないことは意外と大事な要素です。
もちろん本筋の良さは大前提ですが、その良さをストレートに受け取れました。
ドラマを見ているようなアドベンチャー
では本筋のシナリオはどうなのかというとこちらもまた小気味よく、入力インターフェイスの快適さも相まってサクサク進んでいきます。
とくに全7話のオムニバス形式になっているところが大きい。
普通のアドベンチャーゲームだと序盤は事件の背景や登場キャラクターの把握に時間が費やされ、材料が出揃うまでがまず長い。
盛り上がるのか盛り上がらないのかわからない状況が続くことも多く、クライマックスを迎える前にやる気が失われてしまうなんてパターンも経験しています。
それに対してオムニバス形式はシナリオがテンポよく進行します。
もちろん導入の部分はありますが、起・承・転・結が早いサイクルで訪れる。
私の場合、最近は「今日はゲームやるぞ!」と決めるスタイルでプレイしていますので、テンポの良いゲームは相性が良いです。
クロス探偵物語の場合ではプレイ時間的にもちょうどノッて来たな! というところでシナリオも盛り上がってきて、ちょうどよく終わる。
そうなると「もう少しやりたいけどそろそろ止めないと……」という感覚ではなく「あー、ゲームした!」「おもしろかった!」という感覚が心地よい。
探偵モノなので、シナリオの核心部分は凄惨なものが多いですが、プロローグとエピローグにあたる部分は各シナリオともコミカル。
このコミカルさを各話とも持っているのでゲーム全体が重くならずにさっとプレイできます。
後味の悪い事件でも最後に明るく締めてもらえる安心感がありました。
他にもゲーム内では細やかな気配りがされています。
ゲームの文法では、登場人物が同じ格好をしていることは普通のことであり、何の違和感もなく受け入れてしまっています。
このゲームでは登場人物が来ている服が毎日変わります。
同じシナリオの中でも翌日になれば別の格好をしています。
リアリティを持たせるための細かい工夫がされています。
また、シナリオを盛り上げる小道具や当時起こった事件を想起させるようなことも色々と出てきます。
この年代を感じさせるならではのものもあり、今プレイすると当時の世相を思い起こして不思議な感覚になります。
あぁ、この頃そういうのあったなーって。
ミステリーものの深夜ドラマを見ているような感覚でした。
しっかりとした推理
とはいえせっかくの探偵もの。
ただサクサクと進むだけでは面白くありません。
そこは自分で文字を入力したり順番を選ぶなど記憶や推理を試される場面もたくさん用意されています。
これがまた程よい難易度。
きちんとプレイしていれば概ねわかることなので、簡単すぎると感じる人もいるかもしれませんが、私としては自分で解いた気分になれるちょうど良い塩梅だと感じました。
雑誌の情報によればそれまでのプレイによって文字入力が選択肢に変化したりと難易度の調整が自動的に行われるとのこと。
I-VACS の転換もあって、どこまでが発売されたソフトで実現されているのかはわかりませんが、私にはちょうど良い難易度でした。
これからプレイする人に
これからプレイする人のために、私が詰まった場所のヒントを書いておきます。
第五話 紺碧の記憶
話が進まない場合は、各部屋の扉、窓、非常口などをすべてポインタで調べて、人が侵入や隠れたりすることができないことをしっかり確認しましょう。
第六話 満月の夜に
最上階にたどり着いたあと、すべてのコマンドを選択しても進行しない場合はコマンドを選択する順番に注意しましょう。
第七話 タランチュラ
1階を探索する際は部屋と部屋のつながりを意識して、すべての部屋と通路を回ろう。
4人目の殺人では犯人 = モンスターが痕跡を残しそうなところを調べよう。
続編希望!
少しネタバレにはなりますが、エンディングは続編への期待を持たせる終わり方でした。
当初雑誌等の情報では第六話が「タランチュラ」、第七話が「監獄島」とされていました(実際に発売されたゲームは第七話がタランチュラ)。
一番最後のクライマックスとなるシナリオが没になるというのもやや考えにくい(しかも結構発売直前までこの情報でした)。
もしかして続編も企画されていて、そちらにシナリオを回したのかなと勘繰ってしまいました。
しかしこのゲームの続編は発売されていません。
今からでも続編を発売してほしいタイトルです。