今回のレビューは「この世の果てで恋を唄う少女 YU-NO」です。
基本的にネタバレはありません。
一番最後だけ「以下ネタバレ」として、開発者インタビューを一部抜粋しています。
未プレイの方はそこだけお気をつけください。
このゲームは1997年12月4日にエルフから発売されました。
元々パソコンのPC-98用のソフトとして発売されていて、その約1年後にセガサターンで発売。
発売元はパソコン版と同じエルフです。
1997年の年末というのはサターンにとっては豊作となった年末商戦でした。
このYU-NOが発売される少し前の 11/20 にはサカつく2、1週間後の 11/27 はデビルサマナー ソウルハッカーズ、そして 12/4 にはこの YU-NO。
さらにその1週間後の 12/11 にはシャイニング・フォース シナリオ1、12/18 にはグランディアと大作が目白押しでした。
この YU-NO は通常版の他にサターン用のマウス「シャトルマウス」を同梱した限定版も発売されています。
さらにCDトレイが透明になっていて、下がイラストになっています。
全部で12種類あるので、集めようと思ったらかなり大変です。
パソコン版と比べると豪華声優陣の起用での(ほぼ)フルボイス化、オープニングやゲーム中のアニメーション動画などがウリです。
クリアまでのプレイ時間は47時間の大作でしたが、それに見合った名作でした。
ゲームの概要
主人公は「有馬たくや」。
とある事件をきっかけに、現実の世界と同じ場所、同じ時間における別の並列世界をさまようことになります。
死んだと思われている父親「有馬広大」の消息を追うため、並列世界の中で「宝玉」と呼ばれる青く光る玉を集めるというストーリーです。
PC版では8個だった宝玉の数は、サターンへの移植に際して10個に変更されています。
先へ進むワクワク感
YU-NO は画面をクリックすることでストーリーが進行していくアドベンチャーゲームですが、主人公の行動や状況によって展開が枝分かれしていきます。
展開が分岐するパターンとして多いのは「主人公がどこへ移動したか」ですが、中には「特定のアイテムを使用したかどうか」という条件で分岐するものがあります。
アイテム類は何気ないところで手に入ったりします。
入手した時点では何に使うのか全くわからないことも多いのですが、いざ使う場面がわかると「ああ、なるほど!」と思わず膝を打ちたくなります。
「このアイテムをここで使うとこうなるのでは?」という予測が的中した時の嬉しさ、とても懐かしい感じがします。
この感覚何だろうと考えてみると、ファミコン時代のRPGです。
ヒントもない中で右往左往しているとき、いつかどこかで手に入れたアイテムで思いがけず道がひらける。
「もしかしてこのアイテムでこんなことが起こるのでは?」という予感が的中したときの嬉しさ。
YU-NO はアドベンチャーゲームですが、古き良きRPGが持っていたワクワクする感覚が間違いなくありました。
感情移入度が高い
YU-NO は元々パソコンのアダルトゲームからの移植ということもあって私の嫌いな、無駄に思えるほどの長いテキストをしっかり備えています。
キャラクター同士のやりとりがフルボイスということもあり、この手のゲームの主人公にありがちなノリツッコミの類までボイスありになっているため、かなり冗長に感じます(設定でボイスをオフにすることもできます)。
ところが、です。
この冗長さが(ゲーム内での)時間の長さや、たくやの環境の変化を感じさせることに絶大な効果を発揮していました。
物語の途中で、たくやが奴隷労働者として働かされる場面があります。
これまでの日常が平和だったと強く感じました。
この場面よりも前からそう感じることはありましたが、奴隷となった場面では特に強く感じました。
ドラゴンクエスト5でも似たような奴隷になるシチュエーションがありましたが、それとは感情移入度は段違いでした。
このゲームが発売した当時の昔の自分だったら、この冗長なテキストには耐えられなかったかもしれません。
ドラクエはそれを踏まえた上であえて簡略化しているものと思います。
しかし、こちらは推奨年齢18才以上の大人向けのゲームの利点を活かして感情移入度を大きく高めることに成功しています。
物語の終盤に大きく展開が変わり、それまでは境町学園の高校生だったたくやの立場も変化していきます。
ストーリーの根幹に関わるので詳しくは触れませんが、それまでは攻撃的だったたくやが保守的になっていったり、平和な生活を壊されたたくやの怒りだったりといった心情の変化が、いまの自分がプレイしたからこそ感じた部分がありました。
おじさん/おばさんになってしまったゲーマーにこそやってほしい
この YU-NO、最終的には、今までに私がプレイしてきたゲームで感情移入度が一番高かったかもしれません。
これはきっと当時の自分がプレイしていたら感じられなかったと思います。
だからこそ、おじさん/おばさんになってしまったゲーマーにこそやってほしいゲームだと感じました。
リメイク版がPS4、スイッチでも発売されています。
見た感じセリフなどもほぼ同じのようで、クリック場所がある程度絞られていたりと遊びやすくなっているようです。
キャラクターデザインの変更は好みが分かれるところかと思いますが、ぜひプレイしてみてほしです。
以下ネタバレ、プレイ後の謎
クリアした後、物語の結末とは別に、個々の部分で説明がされていないところがあって気になっていました。
PC版の完全ガイドの巻末に開発者へのインタビューがあり、そこの一部の質問で関係するものがあったのでここに引用します。
ネタバレになるので未プレイの方は読まない方が良いです。
(出典元:この世の果てで恋を唄う少女YU-NO 完全ガイド 辰巳出版)
引用ここから〜
Q:主人公の父親は、最終的にどうなったのですか?
A:主人公の実母と一緒にいます。歴史の真理を未だ探求しています。
Q:龍蔵寺の日記の中に出てきた「彼女」とは誰ですか?
A:「ニセ龍蔵寺」のことです。ホンモノの龍蔵寺に接触する時、女性の姿をしていました。
Q:龍蔵寺家にあったタペストリーは何なのですか?
A:以前、この家に住んでいた人のものです。この家に住んでいたのは主人公の実母、ケイティアです。
Q:三角山地下の光る洞窟で、主人公たちを出口まで導いてくれた女性はセーレスですか?
A:そうです。
Q:神奈は主人公の娘…?
A:どうでしょう。手がかりは作品中に提示してあると思います。
Q:アマンダは龍蔵寺に飛ばされてから、どうなったのですか?
A:主人公がいた時代から、数百年前の地球へと落ちてしまいました。
Q:巫女セーレスが自殺した理由というのは?
A:巫女らは、自らの命を断つことで新たなる源の創造を行えると信じていました。それはユーノの行動にも反映されており、彼女は客観的にみると自殺のような行動をとりますが、それは新たな世界への旅立ちだったわけです。主人公の実母が自殺したのはこの他に、あと1つだけ理由があります。
Q:では、主人公の実母(ケイティア)の自殺した理由とは何なのですか?
A:彼女の中には未だデラ=グランティアがいました。巫女の死とともにデラ=グランティアは開放され、次なる衝突回避に備えるのです。
〜引用ここまで
この世の果てで恋を唄う少女YU-NO - Switch